《1/1》は、《日常らしさ》《「自然」をなぞる》《せめて惑星らしく》に続く安村崇の4作目のシリーズとなる。撮影は2008年に開始され、これまで個展やグループ展で発表しつつも、全国をめぐる撮影は2015年まで続き、多数の未発表作品を含む111点が本書にまとめられた。《日常らしさ》において、中心的な被写体と認識されるみかんやショートケーキだけでなく、安村の関心とこだわりは、壁や床、テーブルクロスやカーテンなど主役の置かれた環境――カメラがとらえたあらゆる細部に向けられていたが、《1/1》は、その作業の延長線上にあると言える。(写真集『日常らしさ』は小社より2005年刊行)。2014年にGallery αM 開催された《1/1》の個展の際、安村は《日常らしさ》の頃から背景を気にしていたことを明かし、そのきっかけは、牛腸茂雄の『Self and Others』の写真に「背景」に対する写真家の強い意識を感じたことによると語っている。安村の背景へのこだわりは、《1/1》に至って、「背景を画面の外に追い出す」企てに発展していった。「……《1/1》のグラフィカルな見かけは、まるで主役となる者・物を欠いた背景だけで成立しているかのようである。が、安村のコンセプトはまさに「写真から背景をなくすこと」であった。……それは人間による前景と背景の区別や意味づけを消去して、写真全体を奥行のないフラットなレイヤーに還元することを意味する」(本書収録、清水穣エッセイより)。角にスレ傷ありますがあとは綺麗です。